共創の輪を広げる「Beyondカンファレンス」レポート②

#イベント#インタビュー#ワークショップ

2024年5月31日と6月1日に開催された「第3回Beyondカンファレンス2024 in HANEDA INNOVATION CITY」。2日目は土曜日ということもあり、野外のイノベーションコリドーにも多くの出展ブースが出て、カンファレンスの参加者だけでなく、HANEDA INNOVATION CITY(以下、HICity)を訪れた多くの人が楽しめるイベントになりました。初日とは違った賑わいを見せた2日目の様子をレポートします。

1日目の様子はこちらからご覧ください。

出展ブースで賑わうイノベーションコリドー

2日目は週末ということもあり、HICityを訪れた一般のお客さんも楽しめるよう、イノベーションコリドーに出展ブースが用意されていました。多くの人が足を止めていたのが、能登の特産品やグッズを扱う「能登スタイルストア」のブースです。午後には完売になった商品もあり、小さな支援の輪が広がっていました。

参加者層も初日とは変わって、学生と思われる若い人が増えました。大学生はもちろんのこと、制服を着た高校生の姿もあります。なかには高校生起業家として、すでに事業を立ち上げている生徒もいます。10代から70代まで、多様な世代が集う対話・交流型のカンファレンスからどんな共創が生まれるのか、会場を見ていて、すっかり楽しみになりました。

terminal.0正面には、総合インフォメーションも兼ねた「cosmo radio」の収録ブースが。beyondカンファレンス2024を楽しむためのガイドとして、当日のレポートなどをpodcastでリアルタイム配信。
川崎市の駄菓子屋さん「水都軒」のわくわくこども縁日。さかなが釣れるとラッパが鳴り響く楽しい演出も。
現在、能登地域での子どもの遊び場づくりの活動を行なっている「移動式遊び場全国ネットワーク」も出展。
楽しそうにポーズを決めてくださったスタッフのみなさん。いくつかの団体が協力して運営しており、学生スタッフもお手伝いしていた。
石川県出身のオリンピアンらによる能登半島地震の募金活動が行なわれた。写真左から、トランポリン競技の岸大貴選手(小松市)、飛込競技の中川真依選手(現在は引退/小松市)、スケルトン競技の小口貴子選手(輪島市)、卓球競技の松平健太選手(七尾市)。一緒に写真を撮ってもらったりと、ちょっとした人だかりに。
能登町から「あばれ祭り」の神輿を運んできて展示していた。お祭り開催のために実施していたクラウドファンディングは、その後無事に目標金額をクリアした。

普段は入れないterminal.0も会場のひとつに

terminal.0は、普段はエントランスとギャラリースペース以外は、入居企業以外入ることができません。しかしこの日は、カンファレンスの会場のひとつとなっており、特別に中に入ることができました。

「企業が社会課題解決に関わる新しい方法を考える」をテーマに、ソニーグループ株式会社のCSV事業室を事例として紹介したほか、後半は、企業が社会課題解決に関わる新たなアプローチを探るべく、グループディスカッションを行ないました。参加者が非常に多くてスペースが足りず、急きょ、3階も使うなど、盛り上がりを見せていました。

terminal.0は、HICity zone Cの2、3階にある。2階奥にあるコミュニケーションラウンジもグループディスカッションの場に。
3階は「クリエイティブMTGゾーン」として、カンファレンスで出会った人々が今後に向けた戦略会議を行なう場所としても開放されていた。

教育をよりよくするサービスを考える

小中高生から大学生、社会人まで、誰もが無料で参加できるワークショップ「子どもと大人がごちゃまぜで教育をよりよくするサービスをつくろう!」には、高校生や大学生が大勢参加していました。

用意された模造紙のフォーマットにアイデアなどを付箋で書き出しつつ、グループごとに教育をよりよくするサービスを考え、企画として練り上げます。子どもにも余裕が必要だと「勉強のフリをした合宿」を提案したり、子どもの可能性を広げていくための原体験を提供したいと「原体験図書館」という企画を考えるなど、どれもわずか1時間ほどで考えたとは思えないほど、楽しく魅力的な内容でした。

6つのグループに分かれて話し合い、企画をまとめていく。世代はバラバラで、最年少はなんと中学生! 発表後は質問も飛び交った。
お話を伺った第3回Beyondカンファレンス2024の責任者で、NPO法人ETIC.事業本部 シニアコーディネーターの小泉愛子さん。

共創はイノベーションの原点

ここで、第3回Beyondカンファレンス2024の責任者、小泉愛子さんからお話を伺いました。

——Beyondカンファレンスが始まった経緯について教えてください。

小泉さん Beyondカンファレンスは“意志ある挑戦が溢れる社会をつくる”をビジョンを掲げ、18社が参加しているコンソーシアム「and Beyond カンパニー」が主催しているカンファレンスです。and Beyond カンパニーでは、一社では出来ない挑戦をテーマに、「防災」や「生物多様性」など、プロジェクトベースで、さまざまな課題に取り組んでいます。ただ、オフィスは特になく、自律分散型での活動をしているので、自分が関わるプロジェクト以外で何やっているのかがわかりづらいところがあるんですね。そこで、どんなプロジェクトをやっているのかのお披露目や、そのプロジェクトが新たな仲間を集めるきっかけをつくろうというところから、2022年に第1回Beyondカンファレンスを開催しました。

第1回は鎌倉の「建長寺」をお借りして2日間で150人、京都の里山SDGsラボ「ことす」で開催した第2回は180人が参加しました。回を重ねるたびに熱量が上がっていくのを感じ、第3回となる今年は、参加者1000人を目標にしてみようと大きな会場を探しました。羽田イノベーションシティは、空港の隣という非常に立地の良い場所です。私たちの仲間は全国から集まるので、空港に近い会場であれば、より集まりやすくなるのではないかと思いました。名実ともに桁を変えていくチャレンジをしていこうとしたとき、羽田イノベーションシティは、本当に理想的な場所でした。

クロージングには小泉さんも登壇。今後のand Beyondカンパニーの展開について説明がなされた。

——カンファレンスの手応えや反響はいかがでしたか?

小泉さん and Beyond カンパニーの主体は企業ではあるんですけれども、今回は起業家や学生にもたくさん参加してもらうことができました。自分が舞台に上がって一緒につくるという感覚の方が多く、コンセプトが一貫して伝わる場になっていたことは手応えとして感じているところです。

——参加者がただ話を聞くだけでなく、対話する機会が多かったのも印象的でした。

小泉さん and Beyond カンパニーが設立された理由として、トップダウンの組織構造の中ではイノベーションを起こすのは難しいという前提がありました。カンファレンスにおいても、社長や新入社員、学生など、立場が違う人たちが対等に話ができるよう「この場では批判や批評ではなく応援から始めよう」といったグランドルールを設けています。その結果、来た人一人ひとりが主役になれる仕組みが生まれ、それが文化になってきているので、インタラクティブなプログラムが自然と増えてきたのではないかと思います。

——実際に多様な人たちによる対等でポジティブなディスカッションが展開されていたと感じました。最後になりますが、HICityを利用した感想をぜひ聞かせてください。

小泉さん 私たちが掲げる“共創”はまさにイノベーションの原点でもあり、HICityのコンセプトとも通じるところがあります。今回、大田区が後援に、HICityの運営会社である羽田みらい株式会社には共催に入っていただけたことは、全体の座組としての共創が設計できたという意味でも非常によかったです。また、参加者の声として「こんなにいい場所があったなんて知らなかった」という声もたくさん聞かれました。「今後、何かのときにぜひ利用したい」という方も多く、お互いに価値を高め合うことができたのではないかと思っています。

2日目も、各会場でさまざまなセッションやワークショップが行なわれていた。参加型のセッションが多く、参加者と登壇者、スタッフの垣根があまりないのが特徴。まさに越境(beyond)だ。

全員参加の未来ブレスト会議

カンファレンスのファイナルは、「共創」の有り様を体現したかのような、全員参加のBeyondミーティング。Beyondミーティングでは、事前申し込みは必要なものの、原則、誰でも登壇者となることができます。

アイデアがほしい人は登壇者としてピッチを行ない、挑戦を応援したい人は参加者として知恵やアイデアを提供する。DE&I、生物多様性、地方創生など、テーマごとに7つのブロックに分かれ、約25名が登壇しました。参加者は気になるテーマのブロックのピッチを聞き、興味をもった登壇者の元に移動して、より深く話し合いを重ねます。例年、ここから次のアクションに発展することもあるそうです。

QRコードを読み込むとテーマ別に登壇者一覧を閲覧することができる。朝から1日、カンファレンスに参加していた人も多いはずだが、疲れは見られず、誰もが楽しそうにしている。

ここが始まり。ネクストアクション宣言!

クロージングでは、アンケートアプリを使い、参加者一人ひとりがネクストアクション宣言!「名刺交換した人に連絡する」といった小さな一歩から「3ヶ月後に成果を出す!」といった熱意に燃える宣言まで、さまざまな決意が語られました。おそらく参加者は、2日間の多くのインプットとアウトプットを経て「何かしたい」とうずうずした気持ちが芽生えていたのではないでしょうか。そして、カンファレンスで育んだつながりがその第一歩となることを確信していたように思います。途中で帰って行く人はほとんどおらず、最後までたくさんの人が残っていたのが印象的でした。

多様な文化や価値観が交わり、イノベーションを起こしていく。この日の出会いと交流がどんな未来をつくるのか、希望と期待を感じてやまない2日間でした。

最後に記念撮影。参加者数は1日目386名、2日目341名、合計727名。昨年度の参加者数が約180名とのことだったので、じつに4倍近い参加となりました。

INFORMATION 1

【第3回Beyondカンファレンス2024  in HANEDA INNOVATION CITY

2024年5月31日(金)ー6月1日(土)
(初夏フェス@HANEDA INNOVATION CITYイベント期間中に開催)
開催場所:HANEDA INNOVATION CITY(PiOPARKterminal.0、よい仕事おこしプラザ、その他)
主催:and Beyond カンパニー
共催:羽田みらい開発株式会社
後援:大田区
イベントHP:https://andbeyondcompany.com/bc2024/

INFORMATION 2

第4回 Beyondカンファレンス2025
https://andbeyondcompany.com/bc2025

「研ぎ澄ます」をテーマとした第4回Beyondカンファレンスが、2025年4月25日(金)〜4月26日(土)の2日間、淡路島全土を舞台に開催します。開催概要及びプログラム、エントリーについてはイベントサイトからご確認ください。

text : Yuki Hirakawa photo : Nozomu Ishikawa

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